建築まめちしき  2016/08/23

ギャラリーの設計

以前、ギャラリーを設計した際に、銀座のギャラリー小柳、清澄白川の小山ギャラリー、六本木のピラミデなど参考に成りそうなところは片っ端から行って、空間を体験して、オーナーにヒアリングした。

そこで、ギャラリーを設計する上で、大切なアドバイスを頂いた。
[展示品が入った時に空間が完成する]こと、つまりからっぽの状態では空間がやや物足りないぐらいが丁度良い、という事。

 

いざ設計する時には、空間表現を抑え気味にして「やや物足りない感」をキープすることに心がけた。

それは設計者にとって手足を縛るようなものだが、あくまでも[画竜点睛]は、展示作品、である。

_MG_6755日ノ出町のギャラリー

 

5 thoughts on “ギャラリーの設計

  1. おはようございます。

    私は『空間表現を抑え気味にして「やや物足りない感」をキープ』という表現に引っかかりました。
    ギャラリー設計の知識がないので、SANAAの「ルーヴル・ランス」の知識の下敷きにするしかないのですが(おそらくギャラリーと博物館では設計思想がちがうのかもしれません)、ギャラリーを作るうえでは光と温度と湿度の管理が大切だと聞きました。

    そこで、光の調整はデザイン表現の領域かもしれませんが、温度と湿度は主に設備の問題のように思えますが、だからと言って、安田先生の『空間表現を抑え気味にして「やや物足りない感」をキープ』という表現は、『ギャラリーとして最低限の機能を備えておけばいい』というような表現にも聞こえません。

    空間表現という言葉を使う限り、そこには自分なりの「こだわり」といいますか、「色」のようなものを乗せていると考えてしまいます。ですから、先生のギャラリー設計のお考えをもうすこし詳しく教えていただけませんか。

    1. こんばんは。ご返事遅くなりました。
      ここで言う「空間表現」では、照明計画を除いて設備計画は念頭にないです。いわゆる、目に見える空間表現と理解していただけたらと思います。
      おっしゃる通り、ここで『ギャラリーとして最低限の機能を備えておけばいい』空間を目指しているわけではありません。
      空間の抽象度を高めることを意図していますが、それが「やや物足りない感」という言い方になったと理解してください。(もちろん、抽象度が高くとも、物足りなくない空間もありますが)
      つまり、インテリアを構成する、床・壁・天井の、色、素材、線などの要素が、「少ない」空間を目指したというです。
      あと、今回は、配置と家具工事が、重要だったですね。インテリアの改装なので空間の気積が決まっている中で、出来ることを絞ると、家具工事とその配置がこのプロジェクトでは大切でした。

  2. 丁寧な回答をありがとうございます。

    『床・壁・天井の、色、素材、線などの要素が、「少ない」空間』というわけですか。
    そういえば、ブルーノ・タウトが浜離宮を「涙が出るほど美しい」と評価したのに対して、ル・コルビジエ(ライトだったかも)が「線が多すぎる」とすぐにそっぽを向いたという話を聞きました。お話を聞いていると、ギャラリー設計はモダニズムの思想そのもので、日本の伝統建築とは違う場所にあるように聞こえてきます。

  3. コルビュジエが日本に来て、「線が多すぎる」と言ったのは、建築の世界では有名な話です。それもあって、ここで「線」という言葉を使いました。(ただそれは桂離宮を見て、だったかな。)坂倉順三が案内したようです。
    小野寺さんに言われて気が付いたのですが、確かにギャラリーは今でもモダニズムの価値観が強く生きているビルディングタイプです。モダニズムの特徴の一つに「抽象化」がありますが、これはかなり広域な現象で、建築に限らず、絵画、音楽、彫刻などの芸術分野でこぞって目標となりました。
    それだけ、普遍性を持っていたということでしょうか。もっと言うと抽象化は、20世紀社会にとって必要不可欠な原理だったのだと思います。(例えば、大量生産・工業化など生活や産業の一部を切り取っても、抽象化は使える原理だなと、改めて思います。)
    この「抽象化」を問い直すのは、21世紀の今、とても重要ですね。

  4. 私の記憶が正しければ、坂倉がコルビジエも浜離宮なら興味を示すだろうと思ったら…
    という流れがあったように思います。記憶があいまいですみません。

    先生のお話を聞いていると、ギャラリーはモダニズム的抽象化が進んだ分野をつなぐ接点空間の完成体ようにも見えてきます。その戯画的な形がテナントビル…でも、最近のテナントビルは設計事務所が入っていたりすると、外見では考えられないぐらい階段周りがおしゃれになっていたりしますよね。今日も、間違えて入った雑居ビルの階段が妙におしゃれでした。

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