先日、長島明夫さんから購入した、[精選建築文集1 谷口吉郎・清家清・篠原一男] をとても楽しく読んだ。と同時に、それぞれの建築家の特徴がよく出ていて、改めて考えさせられる一冊だった。
僕は、「これは!」 と思った本は、2回3回と読み直すことにしている。再読することで理解を深め、新たな認識をもたらすから。
今回は、1回目は通読、2回目はエッセイが発表された年代順に読んだ。
この本は、作家ごとのエッセイ・随筆をまとめて、谷口吉郎の章、清家清の章、篠原一男の章に分けた構成となっている。通読すると、それぞれの作家ごとに順番に読むことになる。
ところが、各作家の年齢は 谷口-清家は14歳違い、清家ー篠原は7歳違いであり、それぞれが同じ時代をラップしながら生きている。エッセイが発表された年代順に読むとは、それぞれの作家を錯綜しながら読むことになり、その時代がクリアになると同時に、各作家間の関係も見えてくる。
特に興味深かったのは、清家と篠原の関係だった。誤解を恐れずにいうと、清家は建築を大衆に開くことに関心があったのに対し、篠原は建築の通俗的な部分にはほとんど関心がなかった。
両者の文章を読んでいると師弟関係というよりむしろお互いを批判している論敵の関係に見えてくる。もちろん名指しはしていないが。
当時は、学内で目も合わせないような関係にならなかったのかな?と、こちらがヒヤヒヤしてしまう。
ところが、もう少しよく読んでみると、篠原は清家への尊敬の念を終生持ち続けたし、清家は篠原の発言には構わず大らかに弟子を許容しいた節がある。
そのあたりの関係を示す上で、長島氏の解説も秀逸だった。
綿密に調べているし、東工大建築家の歴史については博覧強記である。
この本は一朝一夕にできたものでは決してない、と思わせる一冊だった。
*購入時(新品)
*現在(図書館の貸出図書みたいになってしまった)