心地よい一日  2026/03/23

サヴォア邸 〜虚の透明性〜

まずはこの写真から。サヴォア邸の紹介では、3番目によく使われる西側の立面。(1番は北西角から、2番は北立面)

内観を見た後外に出て外観をパチパチ撮っている時、ふと足が止まった。
ああ、、、、これがコーリンロウ(※1)の言う「虚の透明性」(※2)か、と。

強い印象だったので、旅行から帰ると、早速段ボールにしまってあったコーリン・ロウの「マニエリスムと近代建築」を引っ張り出して「透明性-虚と実- 」の章を再読した。
実は20代の頃読んで(うまく理解できない部分もあったが)、虚の透明性(※2)と実の透明性(※3)はなんとなく面白く読んだ記憶があった。
再読して、バラバラだった情報が、なんとなくうまく整理された。

実の透明虚の透明、ざっくり言うと、透明なるものの見え方が「物理的」か「心理的」の違いである。
「実」は、「目で見える透明」、例えばガラスを通して見ることで、物理的な透明のこと。
「虚」は、「構成から読み取る透明」、つまり実際に見えると言うより、頭の中で再構成して心に映る透明性。

サヴォア邸が面白いのは、2階外壁の水平連窓にガラスを入れたり入れなかったりしているけど、とりあえず壁の面(レイヤー)を作っておいて、その裏にリビング、屋外テラスなどを並置させ、さらにその奥にスロープ、奥の部屋を並べている。
つまりレイヤーを重ねることで奥性、心理的な奥行きを作っていく。
インテリアを見て回った僕は、この立面から、内部構成や空間の抑揚、動きなど、頭の中で再構成しながら見ている。
コルビュジエは、開口部を見え隠れさせることで、目撃者にその再構成のきっかけを作っている。
・・・・・とまあ、解説するとそんなところだけれど、
コルビュジエが作ったこの不思議な奥行きを、「虚の透明性」という概念で説明したところが、 コーリンロウのすごいところ。
それがお弟子さん達に影響を与えて、後に「ニューヨークファイブ」(※4)という若手建築家達を世に出すきっかけを作った。
1960年代から70年代にかけて、彼らの初期作品は虚の透明性」をより発展させて作品を発表し、今も決して色褪せることのない秀作となった。

今回、コルビュジエというより、コーリン・ロウになってしまったけれど、そんなことを考えるきっかけになったのは、間違いなくサヴォア邸だった。
実は、その後クック邸のファサードもみたけれど、この「虚の透明性」の説得力を改めて感じた次第、でした。

※1 コーリン・ロウ
20世紀の建築界に最も大きな影響を与えた理論家・歴史家の一人。
建築の読み解き方を教えた人。ただ建物を見るのではなく、その背後にある幾何学や歴史、空間の重なりを分析する手法を確立した。
「マニエリスムと近代建築」・「コラージュシティ」が邦訳されている。
※2 虚の透明性(Phenomenal Transparency)
実際には壁があって透けていないのに、建物の重なりや奥行きの構成によって、頭の中で「空間が層(レイヤー)のように重なって透けて見える」と感じる状態のこと。
※3 実の透明性(Literal Transparency)
ガラスやメッシュなど、素材そのものが透けていて、物理的に向こう側が見える状態のこと。
※4 ニューヨークファイブ
1960年代後半から70年代にかけてニューヨークを拠点に活動した5人の若手建築家グループのこと。彼らの初期作品の多くが白い外観だったため「ホワイト派」とも言われた。
・リチャード・マイヤー
・ピーター・アイゼンマン
・マイケル・グレイヴス
・ジョン・ヘイダック
・チャールズ・グワズミー

水平連窓は、リビング、テラス、その奥のスロープ、屋上、内部構成が部分的に見えるようになっている。
こちらも、建築の構成が見えがくれする水平連窓。
ところでもう一点気になったのは、垂直柱がずれていること。左から1本目、2本目の円柱が、1階と2階で平面的にズレていた。
構造柱でいうと、こちらも変なことをやっている。ピロティ部分は基本的に梁は見えないように隠しているが、玄関部分は梁が露出している。
1階と2階を繋ぐスロープ。建築的プロムナード。実はここでも構造的に不思議なことをやっている。スロープ中央に、柱があるが、円柱ではなくラグビーボールのような断面だった。
1階と2階を繋ぐ周り階段。コンクリート製の階段の中心をくり抜いて、スチール性の縦棒を手すり?として”通し”で入れている。しかも縁を切って・・・・
サヴォア邸を見た後、クック邸を見る。(残念ながらファサードだけだったけど・・・)
この通りには、同時代にモダニズムスタイルで建てられたものが多く残っている。
写真 左にコリネ 邸(マレ=ステヴァン)  右にデュバン邸(レイモン・フィッシェ)
一見して感じたのは、クック邸は「抜け感」があること。最上階右は庇の奥に空が見えるし。3階水平連窓の左側は室内が明るいためガラス越しに奥まで見える。(プランでは吹き抜けになっていて写真奥からの光が室内を満たしている)
同じモダニズムスタイルだが、ファサードを見ただけでもクック邸が際立っていた。
これも「虚の透明性」の果たす技、か。

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