心地よい一日  2023/03/01

レーモンドのKRCビル(旧マークスビル)

横浜市の中区役所近くに、ガラスと黒いフレームのカーテンウォール(*1)ビルがある。その前を通る時は、いつも足を止めて見上げていた。
かっこいいなぁ。

最近、それがアントニン・レーモンド設計のビルだと知った。
きっかけは、ある文献を読んでこの建築家に興味を持って色々調べたから。

アントニン・レーモンドはチェコ生まれのアメリカ人。
チェコで生まれてアメリカに渡り、ライトの下で帝国ホテルの現場監理で日本にやってきた。でそのまま日本に居着いて、独立して仕事を始めた人である。
重要な書籍も出版していて、林昌二さんによると当時日本人建築家の多くがこのチェコ生まれのアメリカ人から日本建築の特徴やディテールなど設計のイロハを学んだ、とのこと。

ところで、彼の実生活からは別の顔が見えてくる。後ろ指を指されるような事をしてチェコを追われた経緯、ライトの事務所を辞めて日本に居着いたこと、戦時中、帰国したアメリカで軍に協力した行為、コルビュジエの作品を真似て「夏の家」を作ったこと、など、人としてどうなのか?という、看過できない問題をいくつか起こしている。
とにかく人間として面白い人で、今であれば、建築家生命を絶つような事件を幾つか経験しながらも、日本の近代建築を切り開いた人として歴史にその名を残している。お弟子さんも多くて、前川國男さんや吉村順三さんなどがその代表。レーモンドを悪く言うお弟子さんは僕が調べた限りなくて、師匠としても素晴らしい人だったのだろう。
建築家としての能力と、実生活の影の部分は分けて考えるべきなのか・・・レーモンドほど、そんなことを考えさせる人も少ない。

そんな想いもあって、改めてKRCビル(*2)を見るのだけれど・・・やっぱり
かっこいい。

(*1)カーテンウォール
建物の荷重を直接負担しない壁をいう、。ビルの外周部にある幕壁とも呼ばれる。
(*2)KRCビル(旧マークスビル)
1972年竣工 レーモンドが離日する直前の作品で、設計時の年齢はすでに80才を超えていた。

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