心地よい一日  2023/01/31

横浜国立大学の卒業設計発表会

今年も、卒業設計発表会の季節がやって来た。

YGSAのスタジオを抱える横国建築学科は、講師陣に、西澤立衛さん、乾久美子さん、藤原徹平さん、大西麻貴さんがいる。
発表会は、常勤の先生方、非常勤講師、さらに今年は北山恒さんも加わってとても賑やかだった。(毎年参加されている野沢正光さんの不参加は、唯一心残りだったけれど)

一言で言うと、素晴らしい発表会だったと思う。
YGSAでは国内外で活躍する講師陣による、”国際的で先進的な建築教育” 、と思われがちだが、卒業設計の発表会に参加して、その良さは他にも理由がありそうだ・・・

今年は、東南アジアからの留学生グラシアさんが
『スラムから現代的な村へー伝統的な暮らし方を引き継ぎ、スラムを変えていく』で最優秀賞(北山賞)を受賞した。
彼女の提案は、母国の木密スラム街(インドネシアのジャカルタ)が舞台で、
1)水害や火災などから人の生活を守るためのピロティと不燃化
2)衛生改善(光や風を取り入れる)ための庭や路地を組み込む
3)持続性を考慮したセルフビルドシステムの提案、等。
伝統の良いところを生かし、悪いところを改善する、という当たり前といえば当たり前だけれど、錯綜する問題を丁寧に解きほぐし、人間愛に満ちた密度の濃いデザインだった。

もう一人いいなと思ったのは、川野くんで、『登り眺め琵琶湖を想うー辻に続く共同体の風景をつくる』
琵琶湖につながる長い下り坂(辻)を起点として、道に寄り添うように建物やテラスを配置する。琵琶湖と共に暮らす人々のコミュニティを上手く作っていたように思う。木造の綺麗な架構が印象的だった。

今年は、人に対する優しい提案が多かった。
近年、横国の卒制は、建築や都市が「顔や個性のある人間」にどのように寄り添うか?という難しい問題に向き合っているように思う。近代建築が「抽象的な人や大衆」を扱っていたから建築が前面にでていたのに対して、(建築は)一歩引いていて一見地味だが説明を聞いていると腑に落ちる、というか、改めて図面を見直すとジワジワと効いてくる、というか。

ところで卒業設計発表会は、意匠系以外にも、構造系、環境系、歴史系、都市・建築計画系の先生が全て参加されている。皆さんに発言の機会があり、それぞれがご自分の専門的な話をわかりやすく発言をされている。言うまでもないけれど、セクト的な閉じた発言ではないから素直に耳に届く。
横国の卒制発表会は、建築学科全ての先生や学生がみんなで作るイベントになっている。各先生方の目に見えない努力と配慮の賜物なのだろう。
だから、というわけではないけれど、そんな雰囲気を持つから、毎年参加するのが楽しみな発表会になるのかもしれない。

川野くんの『登り眺め琵琶湖を想うー辻に続く共同体の風景をつくる』

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