心地よい一日  2021/02/11

今年度の卒業設計発表を聞いて

今年は、明治大学と横浜国立大学の2校で、卒業設計の審査に参加した。
明治大学はオンラインで、横浜国立大学は対面だけど窓は全開、外気が身にしみる環境で審査が行われた。
コロナ禍、それぞれ異例な発表会となった。

ただ、もっと異例だったのは、学生の提案が、例年のような納まりの良い作品ではなくて、どこか破天荒というか、想定外の作品が多かったことだ。

明治大学は、関戸香莉さんの「表裏一体 -建築による不可視なものの可視化ー」が堀口賞(最優秀賞)・生陵賞(兼任講師賞)のダブル受賞だった。
エネルギーや環境問題を扱ったものだが、普段は見えない設備系器材を肥大化させてワンルームの部屋を圧迫していくような、社会批評的な作品だった。

横浜国立大学は、河野美紀さんの「いつまでも、この街は私の実家」が吉原賞(最優秀賞)を受賞した。
戦後、徐々に開発された郊外型住宅地を取り上げて、その高齢化と過疎化に対する提案であり、当時の住区がクラスター状に開発された特徴を逆手にとった、住宅地存続の提案である。

どちらも、建築的解決、及び最終的な表現は未熟であるが、顕在化している問題を、より高次元で、しかも真摯に考えているところが評価された。

提案内容はコロナ禍と直接の関係があるわけではないけれど、外部から強いられた不都合な環境に鋭敏に反応していたように思う。厳しい環境が、返って若者の意識を研ぎ澄ましたというか。
自らの手で自らの問題を発見していく彼らを、頼もしく思った。

 

 

画:hiromichi yasuda

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